第14回応募20
浜風蒼樹様
エピソード内容
今年で75歳になる知り合いのおじさんと会食した時、ふとおじさんがため息を吐きました。
「最近、息子から耳の痛い事を言われたよ」
「何を言われたんですか」「昔、息子がやんちゃしていた頃にね。運転技術も伴わないのに高級クーペを乗り回して、爆音を上げて道路を我が物顔で走っていた時、僕はね息子にこう言ってやったんだ。
『人様にいい迷惑だよ。事故を起こしてからでは遅いんだぞ。安全運転をもっと心掛けろ!腕と走りが伴っていない、アンバランスもいい所だよ』とね。
まあ、息子はしばらくして、改心し、道路で爆音を上げる事もなくなったがね、そんな息子に最近こう言われたんだ」
そこでおじさんは一度溜息を吐いて話を続けました。「最近息子を助手席に乗せて買い物に付き合って貰ったんだよ。その道中でね、アクセルとブレーキを一瞬踏み間違えたんだ。
まあ正直に告白するとそれまでにも何回も同じミスをしてしまった事を正直に息子に打ち明けた。
すると息子はこう言ったんだ。
『父さん。昔俺の運転がアンバランスだと言ったよね。俺、思うんだけれど、今の父さん、アンバランスそのものだよ。
そう、気持ちではまだまだ現役のドライバーの積りだろうが、やっぱり老いは免れず、運転がどうしても疎かになっている。
そう、気持ちと運転技術がアンバランスになってしまっている。
そう、父さんは安全運転を第一に掲げているのは知っているし、俺もそんな父さんを見習って、やんちゃな時代の運転を卒業出来たんだ。
だから父さんお願いだ。免許を返納してくれないか。その代わりこれからは俺が父さんを助手席に乗せてどこでも連れていってあげる。
俺は父さんをドライバーの模範としていつまでも尊敬していたいんだ。
そう、だから、万が一の事故を起こして俺や母さんを悲しませないでくれ。頼む、父さん』
僕はそう言われてね。正直戸惑った。そう、車がある生活はとても便利だからね。
でも同時に、息子の言う事はとても正しいと思った。そう、息子の発言を切っ掛けに僕は免許返納を決めたんだ」
私はおじさんの話を聞き終え笑顔で答えました。「息子さん、本当に立派になられましたね。素晴らしい息子さんをお持ちでないですか!」と・・・。
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