第9回銅賞
銅賞:小松崎 潤様
エピソード内容
俺は冬が好き。冬生まれ。妹も冬美。スキー、スノボー、温泉も好き。それなのに困ったのは俺のカミさん。毎年雪山に行くのに今年は行かないって言い出した。「温泉は?」って言っても「遠いから行きたくない」って言う。変だよな。だって新婚旅行だって、蔵王にしたら「国内はイヤ」とか言ったくせに。だけど仕方なく従った。それでもコタツにみかんは、俺の性分に合わない。カミさんもつまらなそうにテレビを見てる。変だよな。「ねぇ、どこならいいの?」たまらず俺が言い出した。「近くで疲れないところ」ますます怪しい。だって俺のカミさん、先月市民マラソン出てるぜ。なんとか説得の末、ドライブならいいと言われた。そして深夜二時の夜の街。久しぶりに動かす車。車内にはTUBEの「あー夏休み」が流れる。季節外れの選曲にカミさんが笑った。「なんかもう少し冬らしいのないの?」そんなとき有線にしたらウルフルズの「ガッツだぜ」が流れた。ますます暑苦しくなった。外は氷点下だと言うのに車内は笑いであたたまった。しかしそれにしても謎なのが、カミさんが外へ出たがらない理由だ。でもその答えは意外とすぐわかった。俺が自販機でコーヒーを買ってきたら、車の曇りガラスに落書きがしてあった。よく見ると「オメデタ」と書いてあった。俺がパパになる!うれしくて、うれしくて、とびはねた。季節は冬。だけど、心はもう「春」がきた!
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