第2回金賞
金賞:大熊様
エピソード内容
私の家は最寄りの駅から非常に遠く、車で30分程行った所にありました。当時専業主婦だった母親が父と私を乗せ、駅まで送ってくれました。
私が大学受験をする時も、毎朝のそれは変わりませんでした。朝4時に、私が受験会場で食べる弁当を作り、朝食や洗濯など朝の支度を終え、車のエンジンをかけ私を乗せる。いつもと変わらない朝でした。しかし、受験を目の前に控えた私は朝から口数が少なく、得体の知れない大きな不安に押し潰されそうになっていました。車の窓の外を流れる仄暗い空を見ながら、車は駅のロータリーに着きました。車から降りようとドアに手をかけた時、母親は運転席から静かに、声を掛けてくれました。
「あなたなら大丈夫。いってらっしゃい。」
母親は私の受験に対し、私以上に心配をしていたと思います。そんな中、母親は私にいつも通りの朝を迎えさせてくれ、いつも通り駅まで送ってくれました。そして最後に、車の降り際に声を掛けてくれた。。たった一言だったけど、私には十分でした。
残念ながら私は受験に失敗しました。だけど、車の中の母のあの一言が最後まで私を諦めさせずに闘わせてくれました。
大学生になった今も、文句を言いながらも母には変わらず駅まで送ってもらっています。
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