第13回応募1
竹之原つばめ様
エピソード内容
私はその頃、免許を取り立てで運転に不慣れでした。しかも不慣れで運転を怖がるあまり、折角、免許を取得し車を購入したのにも関わらず、車を車庫に眠らせたままの日々を過ごしていました。
実はその頃、息子が登園拒否を起してしまいました。あんなに毎日笑顔で出掛けていた幼稚園に突然、行かないと駄々を捏ねる息子。
妻と共に理由を尋ねてみてもダンマリを決め込みます。私は息子に優しく話し掛けました。
「分かった。暫く幼稚園はお休みにしよう。でも、朝、パパと少しドライブに付き合って欲しいんだ」息子は自身の要望が聞き入れられ、不思議そうな表情で「ウン!」と頷きました。
そう、息子は今迄、幼稚園の送迎バスで通園していたのですが、代わりに私がドライブと称して息子を幼稚園に仕事前に送ろうと思ったのです。ですが、無理強いはする積りはありませんでした。
そう、幼稚園の前を車で通り、もし、息子が「幼稚園に行きたい」と意志表示した時のみ彼を通わそうと思っていました。それを電話で幼稚園の先生に伝え翌日から朝、仕事前に息子と近所のドライブに出掛ける事にしました。
翌朝。息子を助手席に乗せ、近所をドライブしながら幼稚園の前を通過する私。息子の顔に緊張感が漂いましたが、強制的に通園させられるのではないと分かり、息子の顔に安堵が戻りました。
私は息子の顔を確認しながらも内心、ドキドキのしっ放しでした。そう、私は車の運転に不慣れだった為、非常に慎重に緊張感を保ったまま車を運転していたからです。そんな感じで初日のドライブが終わり私は息子を連れて家に戻るといつも通り電車での通勤に向かいました。
そんな風に息子と共に朝のドライブを続けて約2週間が経った時の事です。いつも通り幼稚園の前を車で通過しようとしたその時でした。
息子が急に「パパ、車を停めて。ボク、幼稚園に行くよ!」とポツリと言葉を漏らしたのです。私は慌てて幼稚園の前でブレーキを止め、息子に尋ねました。
「本当かい?無理に行かせようとは思っていないんだよ」すると息子は笑顔で答えました。「違うよ。ボク、幼稚園で友達とケンカした事が原因で行きたくなかったの。でも、キチンと謝る。そしてまた、前みたいに、友達と仲良く遊ぶんだ!」漸く登園拒否の理由を語ってくれた息子。
私は息子の頭を撫でていいました。「そうか、分かった。行っておいで、友達と仲直りするんだよ」息子は「ウン!」と大きく頷くとドアを開けて元気に幼稚園へと向かいました。
私は彼を車内から見送った後、車を走らせながら思いました。『これで一件落着だな。だが・・・息子のお陰と言おうか、随分、私の運転も上手くなったじゃないか・・・』そう、息子と朝の近所の短時間のドライブを毎日重ねたお陰で、随分、運転に慣れていたのです。そして私はふと呟きました。「息子も元気になった事だし、今度の週末、家族みんなで初めてのドライブにでも行くとするか」と・・・。
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