第2回事務局賞1

事務局賞:玉井様

エピソード内容

今から五年くらい前でしょうか。
名古屋から高速道路で東京の友人宅を目指して走っていた時のことです。
途中、静岡にある浜名湖サービスエリアで休憩して車に戻ると、駐車場で変な男女二人組が車に乗る人に声をかけてまわっていました。
彼らは僕のところにやってくると、片言の日本語で「コノ車ハ東京ノ方ヘ行キマスカ？」と尋ねてきました。
男性は白人で一発で外国人と分かりましたが、女性の方はアジア系で話すまで日本人だと思っていました。
「ああ、ヒッチハイクですか？」
と私はようやく合点がいき、困った様子の二人を乗せてやることにしました。
後になって友達に乗せてやった話をしたら「一人で運転してて知らない外国人を乗せるなんて絶対無理」と驚いていました。
まあ、普通の日本人の感覚としてはそうらしく、ヒッチハイクしていた二人はなかなか捕まる車がなくてかなり困っていたようです。
東京へ行く道すがら、話してみると男性はフランス人、女性の方は韓国人でした。
二人とも名古屋大学の留学生ということで、休みに入って東京にいる留学生仲間に会いに行く途中だったそうです。
二人は恋人同士なのかと聞いてみたら、そうではないと答えました。女性の方には彼氏が韓国にいて、今は徴兵期間で軍隊にいるそうです。
……というものの、後部座席に座った二人は、うっとりと体を密着させており、これって明らかに男女の仲なんではと疑念が拭えませんでした。女って怖いですね。
そして、一人で夜の高速を走らせるのも寂しいものだったので、お互い片言ながら会話が弾み、せっかくだし、都内見物も兼ねて君達の友達のいるアパートまで送ってあげるよと寄り道することにしました。
中野にあるアパート前に到着すると、フランス人の彼が「お礼させてください」と私を連れて友達の部屋まで案内してくれました。
……この話を友達にしたら「お前そんな知らん人にほいほいついて行ってたらいつか殺されるぞ？」と心配されましたが、彼らは善良な学生さんでした。
都内のフランス人留学生が何人も住んでいるアパートらしく、フランスの家庭料理を作って到着を待っていたようです。
夕飯をごちそうになり、あまり長居するのも無粋かなと食後においとますることにしました。
その時、記念写真をみんなで撮影したのを、今も時々思い出して見つめ直し「不思議な出会いもあったもんだなあ」としみじみ思うドライブエピソードです。

しかも後日談がありまして、韓国人の女の子が何と留学生カードとクレジットカードの入ったポーチを車内に忘れていて、それを三日後に私が東京から帰ろうとした時に発見。慌てて返しにあのアパートに立ち寄り、彼女に返してあげました。
もしアパートまで行っていなかったら、ナビに履歴もなくすぐには返してあげられなかったから、これも運が良かったのだなと今でも冷や汗ものです。
彼らが少しでも日本のことを良い国だと思って帰国してくれたことを願わずにはいられません。

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